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[ モノづくりの向こう側 vol.03 ] 鍛冶職人・河原崎貴さん

こんにちは。YAMAMOTOです。

2年前のある日、お昼に会社でチャーハンを作ろうとしていたら、スタッフから「これで作ってみてもらえませんか?」と鉄のフライパンを渡された。まだ試作段階の河原崎貴さんのフライパンだった。
見ため「薄っ!」手に取ると「軽っ!」、女性にも使いやすそうだなというのが当時の印象。実際に使ってみると、油なじみがよく、チャーハンのお米がパラパラして、目玉焼きも白身の縁がカリッと黄身がジュワッと美味しくできた。
今kiguuで販売しているフライパンは、この試作品からさらに半年かけて試行錯誤しながら完成したものだ。

今秋、銀座松屋の手仕事展で、来東されていた河原崎貴さんにお話を伺った。

「どーも、はじめまして!」と目の前に現れた河原崎さんは、スタイリッシュなストライプシャツにお洒落な銀縁眼鏡。どう見ても鍛治職人には見えなくて、アパレルのバイヤーさんみたいな印象だった。

ーー フライパンを作るようになったきっかけ

17〜18年前、暇で暇でやることがない日々が続いていた頃、「中華鍋がほしい」と言う奥様の買い物に付き合った。
いろいろ見たが、かっこいいのがなくて、だったら作ってみようかと思い、奥様にどういうフライパンが欲しいか要望を聞いた。

見た目、使い勝手、さらにできるだけ安く提供したいという思いもあり、何度も試行錯誤を繰り返した。

銀座松屋での展示風景

ーー SMLオリジナルフライパンができるまで

SMLにもどんなフライパンが欲しいか聞きながら、何度も試作品でいろんな料理を作ってみてもらった。「東京で一人暮らしをしている方は、フライパンをいくつも持つのは難しい。フライパンをひとつだけ買うとしたら、どういうモノがいいだろう?」意見交換を重ねながら、いっしょにオリジナルを作り上げた。
「焼き」「炒め」「揚げ」すべて網羅できるよう、ある程度深く、底面の平らな部分を極限まで大きくした。技術的にとても難しく、かなり苦労した。

河原崎さんのフライパンは、薄くて軽いのが特徴のだが、さらに軽く扱いやすい 直径18.5cm、重量505gのコンパクトサイズが今年完成。
「朝ごはんに目玉焼きをさっと作って、そのまま食卓に出してもかっこいいフライパン」
「ソロキャンプで重宝して映えるフライパン」がテーマの新作は、忙しいママやアウトドア男子にぜひ使ってほしい。

定番品は取っ手部分がしっかりとした鉄の輪っかになっているが、SMLオリジナルは、女性でもしっかり握れて鍋振りしやすくするため、真っ直ぐで華奢な鋼材を採用。フックにも掛けやすく、見ためもモダンで美しい印象に。
女性の手が取っ手のすき間に絡まることのないよう、また鍋つかみを使わなくても済むように、レザーハンドル(取っ手カバー)も作った。

レザーハンドルは、鳥取県米子市に工房兼店舗を構える『mint chu chu Leather(ミントチュチュレザー)』の川口淳平さんへオーダー。フライパンといっしょに使い込むほどに油が馴染み風合いの変化を楽しめる。

ーー フライパンの作り方

河原崎さんの作り方は「鍛造」。鉄を熱することで柔らかくし、その間にカンカンと木槌で叩いて形を作る。叩き頃は800〜1000度。焼いては冷まし、叩きながら形を整えてゆく。叩くことで鉄がギュッと緻密になるので、頑丈さが増す。表面には「火肌」と呼ばれる独特の質感が現れる。これがまたかっこいい。
スタッフやお弟子さんはおらず、すべての工程を一人で行っているため、頑張っても一日に6~7個くらいしか作れない。
基本的には毎日休むことなく、作り続けている。
「一回休んじゃうと感覚を忘れそうで」という言葉から、河原崎さんの真面目なお人柄が伝わってくる。

ーー 愛用しているモノはありますか?

ガスバーナーとか、アウトドア用品の機能美が好きです。最近災害が多いんで、いざという時も役立つし。

「自分の作りたいもの」よりも「こういうのが欲しい」という声に全身全霊で応えたい。
使い手が心から喜んでくれるものを、自分自身も楽しみながら作りたい。
河原崎さんのフライパンにはその想いが「火肌」に宿っている。

まずは目玉焼きを作ってみてほしい。テフロンのフライパンで作った目玉焼きと比べると、見た目と味の違いに驚くだろう。
テフロンのフライパンはどんどん劣化していくが、鉄のフライパンは使うほどに酸化被膜ができて使いやすく、見ためも味わい深くなる。万が一、落っことしたり錆ついたりしても、メンテナンスもしてくれるので、ぜひ長ーいお付き合いを。

使い方、お手入れはこちら
https://kiguu.net/news/5dbc223c220e750695386e9d

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鍛冶職人 河原崎貴 Takashi Kawarazaki
長野県伊那市に工房を構え、「鍛造」という手法で鉄の製品を制作する鍛治職人。
「鍛造」は金属組織の強度を高める製造方法で鉄を熱することで柔らかくし、その間にカンカンと叩いて形を作ります。
叩くことで鉄がギュッと緻密になるので、頑丈さが増し、薄さと驚くほどの軽さが実現しています。河原崎さんはこれらの工程を全て一人で行っています。

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写真:mika araki 文:YAMAMOTO